■徳島が持つ「理に適った柔軟性」
J2リーグ優勝を成し遂げた徳島ヴォルティスが、新たなタイトル獲得へ向かっている。12月23日に行なわれた天皇杯準々決勝で、JFLのHondaFCに3対0で快勝したのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大により、今シーズンの天皇杯は特別なレギュレーションで開催されている。J1からは優勝した川崎フロンターレとガンバ大阪が準決勝から登場し、J2制覇の徳島とJ3王者のブラウブリッツ秋田は準々決勝から参戦した。
徳島はJ2最終節から中2日でHonda戦を迎えた。スケジュールがタイトなだけでなく、長いシーズンを戦い抜いてきた疲労感もあったはずだ。それでも現時点でのベストメンバーで臨み、自分たちらしさをしっかりと発揮していく。
42分の先制点は、相手のスローインをカットしたところから生まれた。敵陣右サイドで奪ったボールを鈴木徳真がシュートし、一度はDFにブロックされたボールを再びシュートしてネットを揺らした。この場面はスローインからだったが、前線から相手をハメ込んでいくのは、徳島の主戦術にあげられるものだ。
後半開始直後の50分に奪った2点目は、圧力をかけてきた相手の裏を取った。1トップの垣田裕暉を起点に2列目の浜下瑛が右サイドから抜け出し、ペナルティエリア内へ走り込んだ鈴木がワンタッチで仕留めた。
20年シーズンのJ2ではポゼッションスタイルに軸足を置いた徳島だが、彼らは理に適った柔軟性を備えている。ポゼッションだけでなくカウンターも選択肢とし、シンプルかつ縦に速い攻撃からも得点を奪っていった。垣田、浜下、鈴木の3人で取り切ったこの2点目も、狙いどおりの得点パターンと言っていい。
59分にあげた3点目は、垣田が獲得したPKを岩尾憲が決めたものだった。相手守備陣がスペースを与えてくれていたこともあり、徳島からすれば難なくPKを獲得したようにも映るが、チームに浸透する「前へ」という意識を読み取ることもできる。