【指揮官の肖像】ユルゲン・クロップ「ゾーンの達人」は稀代のモチベーションブースターの画像
リバプールのユルゲン・クロップ監督 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 歴史的な快挙を成し遂げた監督だ。

 2019-20シーズン、世界は新型コロナウィルスの脅威にさらされた。フットボール界も例外ではなく、2020年3月の段階で欧州各国のリーグ戦は一部を除いて全面的にストップされた。

 そんな異例のシーズンで、プレミアリーグを制したのはリバプールだった。1992年に現在のプレミアリーグが創設されてから、初めての優勝だった。大柄な指揮官は、そこでもいつも通りチャーミングな笑顔を浮かべていた。

 リバプールを再び常勝軍団に仕立てあげた、ユルゲン・クロップ監督である。

■モチベーションのブースト

 ゲーゲンプレッシング。それがクロップの代名詞と言える戦術だ。戦術面においては、クロップはアリーゴ・サッキの影響を多分に受けている監督だと言える。

 サッキは1980年代後半から1990年代前半にかけて「ゾーンプレス」を武器にイタリアと欧州を席巻した。ミランでは就任一年目でセリエA制覇を達成し、その後2シーズン連続でチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)優勝を果たした。 

 トランジションを重視した攻守一体のフットボールが、クロップ版ゾーンプレスであり、即ちゲーゲンプレッシングである。だがその戦術を実践するには、選手たちが団結していなければならない。前線からのプレスを軸にした組織的な守備構築で、ひとりでも怠惰な動きを見せれば、たちまち陣形が崩れてしまうからだ。

 そのなかで、指揮官はグッドモチベーターにならなければいけなかった。選手たちの士気が上がらなければ、戦術が浸透しない。しかし、その点でクロップに心配はなかった。サディオ・マネは語る。

「クロップは父親のような存在だ。僕たちを常に正しい方向に導いてくれる。僕の人生において、余白を埋める存在になった。フットボールだけじゃない。本当に素晴らしい人なんだ。僕は盲目的にクロップを信頼しているよ。チームの全員が僕と同じ気持ちだと思う」

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