■ジェネレーション・ギャップに衝撃
ドルトムント時代の話だ。バイエルン・ミュンヘンとの一戦を控える状況で、クロップはある企てを試みた。
ドルトムントにとって、長年のライバルとなってきたのがバイエルンだ。クロップは、映画『ロッキー』に喩えて選手たちに奮起を促した。
「あの時、私はビデオを作ったんだ。科学者がイワン・ドラゴを研究して、言う。『バイエルンはドラゴのような存在だ。テクノロジー、設備、すべてを兼ね備えている!』とね。それから、シベリアの錆びれた土地でトレーニングするロッキーが映る。これが我々なんだ、と。我々の方が小さい存在かも知れない。だが情熱がある。チャンピオンのハートがある。だから不可能を可能にできるのだと伝えたかった」
だが、この話にはオチがある。そのビデオを見せ、選手たちは怪訝な顔をしていた。クロップが尋ねると、なんとロッキーの存在を知らなかったのだ!俗に言うジェネレーション・ギャップである。
その後、クロップはロッキーとシベリアについて10分間熱弁しなければならなかったという。しかしながら、この「愛嬌力」こそがクロップの武器であり、彼が選手に愛される所以なのだ。