偉大な選手が、名将になるわけではない。だが、輝かしいキャリアと豊富な経験は指導者の道を歩んだ時、必ず助けになる。
プレミアリーグで活躍したスペイン人選手、その「代表格」と言えば、ミケル・アルテタだろう。現役時代、パリ・サンジェルマン、レンジャーズ、レアル・ソシエダと複数クラブを渡り歩いた後、彼はエヴァートンに辿り着いた。
デイビッド・モイーズ監督の下、アルテタは輝きを放った。あの頃のエヴァートンは、今もなお、史上最高のチームのひとつとして人々に記憶されている。そのチームで、ボールは常にアルテタを経由していた。そこで、アルテタのトータルフットボーラーとしての地位が確立された。
そして、アーセナルではアーセン・ヴェンゲル監督の指導を受けた。アルテタの獲得を進言したのはセスク・ファブレガスだったという。「アルテタの影響力は凄まじかった。試合に出場していない時でさえ、チームに影響を与えていた。彼は毎日練習の2時間前に来て準備をしていた。いつか彼が監督になる日を待ち望んでいる」とはヴェンゲルの弁である。
■強いパーソナリティー
エヴァートンとアーセナルでは、主将を務めた。ただ、もう少し遡れば、彼のパーソナリティーの強さを表すエピソードが、すでにあった。
2002-03シーズン、レンジャーズはセルティックと優勝を争っていた。最終節、両者は勝ち点で並んでいた。得失点差でタイトルが決まる、そんな劇的な展開でレンジャーズがアディショナルタイムにPKを獲得する。
そのPKのキッカーを務めたのは21歳のアルテタだった。アルテタはキックを成功させ、レンジャーズにクラブ史上50度目のリーグタイトルをもたらした。