4バックでありながら、ビルドアップの場面では3バックになる、というチームは珍しくない。両サイドバックが高い位置を取るために最終ラインからいなくなり、2人のセンターバックが左右に開き、中央には中盤の底の選手が下りてきて3バックになる。あるいは、片方のサイドバックだけが上がり、それ以外の3人で3バックを形成する。
試合開始からすぐに、マンチェスター・シティのビルドアップは後者のパターンで行われているように見えた。左サイドバックのジョアン・カンセロが抜け、カイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズ、ルベン・ディアスが大きく広がるのだ。
しかしながら、シティのそれはよくある可変システムとは違っていた。
カンセロは左サイドの高い位置を取るのではなく、ふらふらとセンターサークルの近くを漂った。インナーラップではなく、漂っている、という表現がふさわしかった。しかも、わざわざ変わったことをしているのに、そういうイレギュラーな位置にいる時はボールに触れない。パスコースは生まれているのに、ボール保持者が近くにいても、あっちに、と手で指示するだけだった。攻撃が進むと、トップ下のような位置にするすると上がることもあったが、結局、カンセロがボールを触るのは、いわゆる左サイドバックらしいポジションにいる時だけだった。
ではなぜそんなことをしているのか?