■選手名を記録しないJリーグ
ところで、Jリーグの記録には、どこを探しても「自殺点第1号」の井原の名前は出てこない。「自殺点は不名誉」「本人がかわいそう」とばかりに、公式記録にオウンゴールの記録者を入れないことにしたからだ。海外のサッカーでは、そのチームの得点者として相手チーム選手の名が入れられ、「OG」とつけられているのが普通だが、スタートして30年にもなろうとしているJリーグでいまもまだオウンゴールが誰によって記録されたのか、明記していないのは不思議でならない。
私も、練習試合だったが、高校時代にオウンゴールを記録したことがある。相手チームが左サイドを突破しようとしている。ゴール前を見ると味方DFは戻りきれておらず、フリーの相手選手がいる。危ないと感じて、私は必死に戻った。そこに相手のシュート性のクロスがきた。懸命に走っていた私はクリアすることもできず、体に当たったボールがゴールにはいった。
私が戻らなければ、フリーの相手に渡り、ゴールを決められていただろう。オウンゴールになってしまったのは悔しかったが、中盤で弱気になってミスをし、ピンチを招いてしまったときほどには(レベルの低い比較だが)、チームメートに対してすまないとは思わなかった。まして恥ずかしいなどという気持ちなど、かけらもなかった。
オウンゴールはけっして恥ではない。たとえ大間抜けのようなオウンゴールをしてしまっても、がら空きのゴールにけり込むだけで幼稚園児でも得点になるケースで外してしまうFWもいるのだから、気に病むことはないし、まして記録する側が斟酌する必要などまったくない。Jリーグもそろそろ大人になって、オウンゴールをしっかりと記録すべきだ。オウンゴールも、重要なサッカーの一部なのだから。