■皇后杯で日テレ対ノジマに注目する理由

 天皇杯では県リーグ所属クラブまで勝ち残ることになったが、一方、女子の皇后杯全日本女子選手権大会の方はきわめて順当な結果となり、準々決勝に勝ち残ったのはすべてなでしこリーグ1部のチーム。それも、1位から8位のチームが勝ち残った(なでしこリーグ7位のマイナビベガルタ仙台レディースは、なでしこリーグ2部優勝のスフィーダ世田谷と1対1で引き分けてしまったものの、PK戦を制して準々決勝に勝ち残った)。

 サッカーというのは番狂わせ、ジャイアントキリングが生じやすいスポーツなのだから、ノックアウト方式の大会では天皇杯のように下部カテゴリーのクラブがいくつかは勝ち残るべきものだ。皇后杯のように上位チームが順当に勝ち進むというのは、上位チームと下位チームとの実力の差が歴然としていることが原因だ。そして、これがいよいよプロ化を目前にした日本の女子サッカーの問題点なのだ。

 もちろん、昨年までのような日テレ・ベレーザ(今シーズンから「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」)のタイトル独占時代が終わり、なでしこリーグ1部では浦和レッズレディースが優勝。上位4チーム(浦和、日テレ、INAC神戸レオネッサ、セレッソ大阪レディース)が激しい順位争いをするようになった。また、かつては1部リーグでも下位チームとの差がきわめて大きかったが、今では下位チームも上位に対して抵抗はできるようになっており、選手層は日本女子代表がワールドカップで優勝した2011年当時と比べてもはるかに厚くなっている。

 だが、プロリーグの成功ということを考えるなら、どうやってチーム間の格差を埋めていくかが大きな課題となる。上位と下位の差が大きすぎては、リーグ戦としての面白みに欠けるからである。

 皇后杯は、準々決勝でもやはり順当な結果に終わる公算が高い。そうなれば、再びなでしこリーグの上位4チームの争いとなる。

 そんな準々決勝の中で、僕が最も興味を持っているのは日テレ・東京ヴェルディベレーザにノジマステラ神奈川相模原が挑戦する試合だ。

 ノジマステラはなでしこリーグ1部8位に終わったチームだが、上位相手には何度も善戦したからである。

 というのも、今シーズンからチームを率いている北野誠監督(長くカマタマーレ讃岐で監督を務めた)が「自分たちの戦力で戦うために」と割り切って、しっかりとブロックを作って守り、相手によって、時間帯によって戦い方を戦術的に変えることのできるチームを作ってきたからだ。実際、皇后杯で格下の相手と対戦して自分たちでボールを持つ状況になると攻めあぐねて苦戦してしまう試合が多かった。ところが、選手たち自身も上位相手の戦いには自信を持っているのだ。3回戦で同じ1部リーグながら格下の愛媛FCレディースと対戦した試合でも、ノジマステラは守備を意識した戦いを繰り広げた。すべて、準々決勝で日テレ・東京ヴェルディベレーザと対戦することを想定してのことだ。

 北野監督自身も「ベレーザがうちのブロックを破れるだろうか」とかなり自信を持った口ぶりで「ベレーザとの試合が楽しみだ」と言う。

 いずれにしても、WEリーグの成功のためにも、準々決勝以降は激しい「どちらが勝つか分からないような」戦いを期待したい。

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