■12月12日/J1第32節 鹿島―清水(カシマ)
鹿島サッカースタジアムは、どんよりとした曇り空の下にあった。突然、雲が薄くなったかとおもうと、西から陽光が指してきた。偶然、サポーターの喧騒にも会わなかったため、徹夜明けの記者にとっては、早朝と勘違いしそうな、まったりとした空気感だった。
その陽光の中を、ジーコが運転する車がスタジアムに入ってきた。それに続くように、鹿島アントラーズの選手を乗せたバスが走ってきた。ジーコがチームに晴れをもたらした――そんなシナリオを思わず思い描いてしまうような瞬間だった。
はたして、その後のピッチの上には歓喜の陽光が降り注いだ。輝きの中心にいたのは、FW上田綺世だ。今、乗っている22歳のストライカーが、試合開始早々の4分と12分に清水のゴールネットを揺らしてみせた。シュートはどちらも豪快なものではなく、「ゴールへのパス」というジーコの教えを実践するようなものだったから、やはり、先ほどのシナリオが頭をよぎる。