■ホテルの部屋で、北朝鮮の悪口大会

 雑談で、僕が「本当に部屋は盗聴されているんでしょうかね?」と言ったことから、「それじゃ、今夜試してみようか?」という話になりました。

 夜、食事を終えてから辺見さんが僕の泊まっている341号室にやって来て、北朝鮮に対して批判的なことを言い合ったんです。

「金日成(キム・イルソン)主席の悪口」なんかを言ったら大変な事になるかもしれません。まあ、拘束されることはないでしょうが、国外追放などされてしまっては試合が見られませんし、日本代表に迷惑をかけてしまうかもしれません。

 そこで、詳しくは覚えていませんが、「ホテルの廊下なんかも真っ暗だし、やはりかなりの電力不足なのだろう」とか「街中に置いてあるゴミ箱が空なので、物資不足は深刻なんじゃないか」といった平壌の印象を正直に語り合ったように記憶しています。

 部屋の壁には、金日成主席の写真が飾られており、僕たちを見下ろしていました。

 平壌市内に住んでいるのはこの国のエリート(特権階級)たちばかりのはずなのですが、実際、それでもやはり物不足は深刻のように見えました。

 街の中を歩いた時に大通りのゴミ箱の蓋を開けて見て回ったら本当に空ばかりでした。ホテルの照明は暗かったし、大同江の河畔にそびえている『主体(チュチェ)思想塔』は彼らにとっては非常に大切なもののはずですが、それでも夜の10時くらいには照明が落とされてしまうのです。

 街中のあちこちに『テレビジョン修理』という看板が出ていました。こっちのテレビは故障が多いのでしょうか……。(「テレビ」ではなく、ハングルで「テレビジョン」と書いてありました)

 さて、滞在中は朝食の後ホテルのロビーに集合して、案内人(監視員)たちからスケジュールなどの連絡事項を聞くのが日課になっていました。で、僕と辺見さんが北朝鮮の悪口を言った翌日の朝、全員が集合すると案内人の一人がこう言いました。

「皆様に、共和国の現状についてご説明しないといけません」

 そして、それから30分くらい北朝鮮の経済や社会について説明がありました。

 僕と辺見さんは「ああ、やっぱり盗聴してたんだ」と頷き合いました。

 しまった、「朝鮮人参」と3回言っておけばよかった!

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