この日、ウォーミングアップに出てきたベガルタ仙台の選手を迎えたのは、たくさんのフラッグと拍手だった。フラッグは振らずに持っているだけだ。14試合勝ちなしになってしまったチームを、制限の多い環境でもどうにかして鼓舞しようとしていた。それは、これぞまさしくサポーター、という光景だった。
その少し前、ベガルタの菊池秀逸社長は四方に深々と頭を下げていた。
先程の、こういう時にいつも以上に応援してくれるサポーターを思い浮かべてほしい。そうすると、債務超過と暴行事件のことを謝罪した社長にも、きっと暖かい拍手が飛んだのだろう。そう思うはずだ。
しかし、スタジアムは無反応だった。拍手もブーイングも野次も無かった。
ベガルタのサポーターは怒っていた。
クラブ存続のための募金が始まる時には経営陣を非難した。
まず自分たちで必死にどうにかしようとしてくれ。全てをやったうえでどうにもならないのならば、その時はいくらでも力になるから、まず行動や態度で示してほしい。
そう伝えていた。
そこに暴行事件の対応が乗っかった。