■敵の動きを巧みに利用する
例えば43分、敵陣ペナルティエリアの右でのプレー。
執拗な三原のマークを巧みな身のこなしで振りほどき、イニエスタがクロスを送る。ボールは目の前の敵に当たってはね返り、ふたたびイニエスタのもとへ。
柏ゴールに背中を向け、ボールを落ち着かせながら外に逃げようとするイニエスタに、背後から三原と神谷がプレッシャーをかける。
数的不利な上に、体勢も悪い。
だがイニエスタは、素直に下げようとはしなかった。
巧みなヒールを繰り出し、背中に張りついた三原と神谷の間にパスを通し、一気にふたりの背後を取ってしまった。
背後を見せながら、敵の背後を取る。
さすがイニエスタ。敵地の観衆をうならせるプレーだった。
もうひとつ、84分にも“らしいプレー”で背後を取った。
中盤でうしろを向いてボールを受けたイニエスタに、今度はヒシャルジソンが圧をかける。
イニエスタは押し出されるような形で自陣に戻りながら、「の」の字を書くようにターン。気がつけば、前を向いてしまった。
これもバルセロナ時代からよく見せていた得意技。背中を押してくる敵の力を利用して、前を向いてしまうのだ。