■これからの営為のための強い意思
松本さんへのインタビューの最後に、私は少し残酷なことを聞いた。
「もし今後、また今回のような水没があったら、どうしますか?」
私が予想した答えは、「何回でも復旧させる」といったような威勢のいい言葉だった。だが松本さんは落ち着いた声でこう言った。
「毎年の営業のなかで、少しずつでも積み立てていこうと思っています。たとえば500万円ずつ。何かあったときにそれではまったく足りないかもしれないけれど、そのときに使えるおカネを積み上げていきたいと思っています」
昨年度は、ラグビーのワールドカップでロシア代表の練習場になったこともあり、2億6000万円の収入があったが、復旧工事などに費用がかかり、最終的に1億6000万円もの赤字を出してしまった。しかしことしはわずかでも黒字にしたいという。それはスタッフ全員の意思でもある。スタッフからの提案で、通常なら休業になる年末の最終週末も営業することになった。サッカーファンの皆さん、レッズランドは12月26日土曜日、27日日曜日も使えますよ! と言いたいところだが、すでに予約でいっぱいだ。
私たちは「自然災害のある国」に生きている。日本という国が亡くならず、この国土の上で人生をつないできたのは、けっして英雄的な気分ではなく、松本さんの言葉にあるような地に足がついた対応であることに、私は深い感動を覚えた。