「レッズランド再生秘話」台風被災からの復興(5)浦和レッズの「ゴール裏」で培われた大きな力の画像
緑豊かに復旧したレッズランド(2020年9月)。(c)Y.Osumi
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昨年10月に日本列島を襲った台風19号は多くの人々の生活に深い爪痕を残した。荒川の河川敷に広がる浦和レッズの総合スポーツ施設、レッズランドもゴールポストをはるかに超えるほどに冠水し、水が引いた後も、埼玉スタジアム3個分の広大な敷地を汚泥が覆いつくしていた。多くの人びとの強い意志によって復旧を果たすまでの道のりを詳細にレポートする――。

■ゴール裏で培われた大きな力

 だが当日集まったのは30人。20代から40代が中心で、なかには6人の女性も混じっていた。作業が始まって、松本さんは前年11月に増す驚きを味わった。的確に仕事が割り振られ、30人が組織的に動いていく。男性顔負けの力仕事をこなす女性もいたが、他の女性たちはフェンスの金網に付着したゴミを落とすなど、体力に適した仕事が与えられた。メンバーはやるべきことを黙々とやり、そして楽しそうだった。

 朝から夕刻まで、彼らは3月の2回の日曜日に集まり、幅3メートルほどの道路を、長さにして100メートル以上、砂や瓦礫を撤去し、道路は通行できるようになった。その合間には、デイキャンプエリアのゴミ拾いもした。デイキャンプエリアには、流れてきたペットボトルなどが木立の間に散らばったままだったのだ。「あそこをきれいにしよう」とみんなが自主的に動き、どんどん片づいていった。浦和レッズの競技運営部からの弁当の差し入れにも、「そんなこと、気をつかわなくていいよ」と、黙々と作業を続けた。

 彼らはアウェーの試合では、サポーター入場口でホームクラブが用意した警備員をサポートしてスムーズな入場を実現し、混乱を防いでいる。組織力、リーダーの指揮下でメンバーが整然と動き、働くのは、もちろん、「ゴール裏」の活動で鍛えられた力だった。それが、浦和レッズというクラブが四半世紀のうちに培ってきた「文化」のひとつだった。

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