■JFL、大学勢に優勝のビッグチャンス

 さて、非常に変則的な形ではあるが、2020年度の第100回天皇杯全日本選手権大会が始まり、1回戦ではほぼ順当にJFL勢などが勝って2回戦に進んだ。

 Jリーグ勢がラウンド16(5回戦)まで不参加ということは、各都道府県を代表する「アマチュア・チーム」にとっては優勝を狙うための大きなチャンスともいえる。

 たとえば、アマチュア・シードチームとして出場するJFL王者のHonda FC(本田技研工業フットボールクラブ)。JFLでは2016年から4連覇中の絶対王者であり、昨年の天皇杯では北海道コンサドーレ札幌徳島ヴォルティス浦和レッズを連破して準々決勝に進出。準々決勝でも鹿島アントラーズに善戦したが、0対1で敗れてベスト8で姿を消している。

 つまり、Honda FCは昨年3度の「ジャイアントキリング」を達成しているのだ。今年度はJリーグ勢が参加する準決勝以降に3度のジャイキリがあれば優勝ということになる。もし、記念すべき第100回大会でHonda FCが優勝を飾れば、21世紀の初めの日本にHonda FCという強豪チームが存在していたという記録と記憶を永遠に残すことができる。

 今シーズン、7月に再開したJFLでやや出遅れていたものの、9月20日に6試合を消化した時点で定位置の「首位」に立ったHonda FC。JFLは11月末には全日程が終了するから、もしその時点でHonda FCが天皇杯で勝ち残っていれば、12月20日の天皇杯の5回戦以降に向けて十分に調整して臨むことができる。一方のJリーグ勢は直前まで厳しいリーグ戦が続くわけで、コンディション的にも有利な状態で戦えるのだ。Jリーグ勢を倒して勝ち進むチャンスは十分にあるだろう。

 もちろん、挑戦資格を持つのはHonda FCだけではない。JFLや大学の強豪チームは、今年度こそぜひ本気で天皇杯獲得を狙ってほしい。

 一方、J1リーグ優勝チームにとっては「二冠」獲得の大きなチャンスとなる。 例年通りの形式の大会では、J1チームは2回戦からの出場となり、6試合を勝ち抜かないと優勝には手が届かない。番狂わせの多いサッカーという競技の特性を考えると、「二冠」というのはどんなに強いチームにとっても非常に難しいタスクなのだ。しかし、今年度の天皇杯では準決勝からの参加となるのだから“格下”相手に2つ勝てば優勝に手が届く。

 アマチュア・チームの戴冠が実現するのか、それともJ1王者が「二冠」を達成するのか……。普段の年の天皇杯とは一味違う大会になることだけは間違いない。

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