川崎にとって、14分にMF田中碧のゴールで先制したものの、それ以後の前半は決して思い描いた展開ではなかった。本来、3-4-1-2の広島が、守備時には重心を重くして5-4-1に布陣。ゴール前に「5-4ライン」を敷くことによって、川崎から見た場合、パスワークで間受けするスペースがほぼなく、左右の揺さぶりも効果的とは言えなかったからだ。
そこで、前のめりになる川崎だったが、それゆえに後方が2バック状態になってしまい、そこで広島が何度かチャンスを作った。失点しなかったのは、個人の力量に加えて運が味方したからだった。
そこで、「攻撃から守備の切り替わりが早いから、リスク管理をしっかりしよう」とハーフタイムに指示を出して、広島のカウンターに警戒を促した鬼木達監督は、後半開始から手を打つ。それが、2枚替えだ。右ウイングに入っていたFW旗手怜央に代えて、FW三笘薫を投入。さらに、MF脇坂泰斗に代えて大島僚太を入れた。大島はそのまま脇坂のポジションに入ったが、三笘は右ウイングではなく左ウイングに入った。そして、左ウイングにいたFW齋藤学が右に移った。システムは変わらず4-3-3だ。
鬼木監督が後半開始から2枚替えを敢行するのは、実は今季これが5回目だ。2点をリードされた仙台戦。1対1で均衡した試合となった横浜M戦。先制され、そして今季唯一の敗戦となった名古屋戦。セットプレーで1点をリードしたものの、主導権を握れなかった札幌戦。鬼木監督としては、後半開始からの2枚替えには、前半にうまく行かなかった試合の行方を手繰り寄せたい意図があるはずなのだ。