■最後まで走り続けた栃木だが…
後半開始早々の50分には栃木が2点目を奪う。今度は明本がスーパーゴールを叩き込んだ。左サイドバックの瀬川和樹のスローイングをペナルティエリアすぐ外で受け、胸トラップしたボールを左足ボレーで叩く。コントロールされたシュートが、ゴール右下スミへ吸い込まれた。
栃木が2対0でリードした56分、北九州の小林伸二監督はボランチの加藤弘堅を下げた。マイボールの局面ではCBの間に下がってビルドアップをしたり、中長距離のタテパスで2トップを効果的に走らせたりもするボランチが、今シーズンもっとも早くベンチに下がった。栃木の守備がいかに機能していたのかが分かる。
62分にはディサロ 燦シルヴァーノと椿直起も交代する。栃木が彼らをベンチに下げさせた、と言っていいだろう。ここまで得点ランキング2位のディサロは、田代雅也を中心とする栃木の守備陣にほとんど何もさせてもらえなかった。
栃木が2点をリードしたまま、ゲームは終盤へ向かっていく。ここから先の見どころは、栃木の運動量が落ちないのか、である。
69分付近の飲水タイム時のボール支配率は、栃木が31パーセントで北九州が69パーセントだった。前半よりもさらに北九州がボールを握っているが、試合の構図は変わっていない。足が止まることのない栃木は、北九州の攻撃を封じながら相手の背後を突いていく。
しかし、残り15分が近づいたところで、流れが微妙に変わっていく。186センチの鈴木国友をターゲットとした北九州が、攻撃のテンポを上げていくのだ。運動量がほぼ落ちていない栃木を相手に、この時間帯からさらにギアを上げる北九州もさすがである。彼らのハードワークもまた、特筆すべきものと言っていい。
74分と82分に失点した栃木は、2対2に追いつかれてしまった。次の1点は生まれず、両チームは勝点1を分け合った。
スコアだけを見れば、2位の北九州が盛り返したということになる。ただ、この試合から読み取るべきは栃木の可能性だ。
昨シーズンは得失点差でギリギリJ2に残留したチームは、田坂監督が「群れをなして全力でボールを取りに行く」と表現するサッカーで独自の立ち位置を築きつつある。チームの戦いの土台とする走力を連戦のなかでも維持できれば、目標とする「10位以内」は確実に近づいてくる。
何よりも、試合を重ねるたびに戦いぶり芯が通っている栃木のサッカーは、「次の試合も見たい」と思わせる期待に満ちている。