縦に推進力のある山中亮輔と橋岡大樹のサイドバックコンビは、本来、浦和の武器となる。
しかし、その2人になかなかいい位置でいい形でボールを入れることができなかった。そのため、2人から良質なクロスが入る場面はなかなか見られなかった。
一方、神戸は初瀬亮がいる左サイドを有効に使った。神戸の先制点も、この初瀬のクロスから生まれた。前半14分に得点した小川慶治朗は、ただ蹴り込むだけでよかった。
大槻毅監督が試合後、「内容としては、前半にもう少し質を出さなければいけませんでした。守備のところでの甘さ、ディフェンスのところでクロスを上げられるとか、そういうことが見られましたので、前半からもっとしっかりとプレーしなければいけませんでした」と話すように、前半のサイド守備は機能しておらず、それに伴いサイド攻撃も沈黙していた。
ここで、前半の両チームのクロスについてまとめてみた。前半のクロスは全部で9本。うち、浦和は2本で神戸は7本だ。(前半6分の山中、24分の橋岡、45分の古橋の3つのプレーに関しては、クロスとして扱っていない)
クロスの本数としても神戸に圧倒されているが、さらに、クロスを放った時点でのPA内の人数に差がある。浦和は2本しか放っていないが、クロス時のPA内の人数は平均2人。一方、神戸は約3.4人。クロスが味方の誰かに渡ったことを「成功」とすると、神戸は7本中5本で成功している。
また、神戸はクロスを放つ際にクロッサーがいい形で上げられることが多い。それと影響しているのが、サイドでのサポート体制と、中盤からの配球だ。初瀬などは高い位置でボールを受けている。そのため、相手ディフェンダー1人と勝負して勝てば、一気にチャンスになる。そのために、サンペールなどが中盤で人を引き付けてからのサイドへの配給を行ったり、サイドでワンツーをして相手ディフェンダーを置き去りにしたりした。
一方、浦和は中盤での左右前後への配球役がいなかった。柏木のようなゲームメイカー・プレーメイカーがいないことが、チーム攻撃が少ない要因であるともいえる。
神戸で最もクロスを上げ、アシストも決めた初瀬に対峙したのは主に橋岡で、橋岡は何度も裏を取られた。しかし、それを橋岡1人のせいにするわけにはいかない。
そもそも浦和は、守備時に最終ラインの4人が中に絞って対応する。そのため、神戸が中央でボールを持ち、視線と人を集めた状態でサイドにボールを出せば、浦和のサイドの人数は自然と少ない。パスが出された時点で橋岡はスライドをしなければならず、その状態での守備は決して簡単ではない。