それは、まるで悪夢のような90分だった。FCバルセロナがバイエルン・ミュンヘンに信じがたいスコアで大敗した。なぜこんな惨劇が起こってしまったのか。大量失点の原因を分析し、回避するための処方箋を探る。ピッチに立つ選手たちはもちろん、スタンドから声を送るサポーターたちにもできることがある。
FCバルセロナ、バイエルン戦で歴史的大敗
この夏最大の衝撃は、UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)とFCバルセロナ(スペイン)が対戦した8-2というスコアだった。この試合を見て、2014年ワールドカップの準決勝でドイツが地元ブラジルを7-1という信じ難いスコアで下した試合を思い起こした人も多かったに違いない。なぜ世界最高峰の大会、力が拮抗しているはずの試合でこんなことが起こるのだろうか――。
試合全般を見れば、どちらも、スコアは示すほど一方的ではなかった。ブラジル対ドイツも、バルセロナ対バイエルンも、ボールの支配率はともに51%対49%。ほぼ互角で、いずれも負けたチームがわずかながらまさっていた。前半だけで5点を取られたブラジルだが、シュート数ではドイツを圧倒する数字を残している。どちらの試合も、「そんな結果になるはずがない」試合だったのだ。
長い間アメリカにサッカーが根づかなかった理由として、誰もが見たい「ゴール」があまりに少なかったことがよく挙げられる。サッカーで最も頻繁に起こる試合結果は「2-1」であり、0-0の引き分けも珍しいことではない。昨年、2019シーズンのJ1全306試合を見ると、1チームが1試合に3点以上を取った率はわずか14%に過ぎない。4点以上になると5%を切る。
ワールドカップでは1954年のスイス大会で1試合平均5.38ゴールという記録がつくられたが、1962年以後はいちども1試合平均が3点を超えたことはない。Jリーグ(J1)では1993年のスタート以来全7752試合で生まれた総得点が2万2529。1試合平均は2.91である。トップクラスでは1試合平均で両チームを合わせても3点に満たないサッカーの得点。ではなぜ、大量点が生まれるのだろう。