■フル代表も現実味を帯びる20歳の大器
ボールの位置を基準に、それぞれがもっとも危ないポジションに構えるC大阪は、よほどのことがない限り、CBは外に出ていかない。攻め上がったSBの裏は、ボランチがカバーする約束があるため、ゴール前に穴があくことは滅多にない。
その堅い守備が後半崩されてしまったのは、追いつくために攻めに出たことで後方にスペースをつくってしまったからだ。
最終ラインを大きく押し上げ、両SBがさらに高いポジションを取ることで攻撃体制にシフトしたが、そこを川崎に突かれる格好となった。
CBの周りのスペースはボランチがカバーするところ。だが、川崎にフレッシュでスピードとテクニックを備えた選手を次々と投入されたことで、ペナルティエリア周りに次々と火の手が上がり、消し止められなくなってしまった。
攻撃型に移行したC大阪は、高い位置からプレッシャーをかけようとした。だが、ここで川崎の中盤のアンカー、田中をつぶせなかったの誤算だった。
着実に地力をつけてきたC大阪にとって、5失点はロティーナ監督就任以来初の屈辱。川崎を完全に走らせてしまったことも含めて、ダメージは残りそうだ。
だが、試合運びの方向性は間違っていないと思う。
正しいポジショニングで守ることで体力的な負担が減り、それが攻撃の活性化につながる。そうしたシーンが次第に増えてきているからだ。
そして、楽しみなことがもうひとつ。
優れた指導者との出会いによって、選手一人ひとりが才能を開花させようとしている。
例えば瀬古歩夢。下部組織U-12から鍛えられた20歳のCBは、ロティーナ監督に抜擢されて2年目、最終ラインに欠かせない存在となった。
プレッシャーに強く、身体を寄せられてもボールを持ち出すことを怖がらない。
すでにU-20ワールドカップを経験しているが、ロティーナ監督のもと、守備のエッセンスを学んでいけば近い将来フル代表にも名を連ねるようになるだろう。