■FW出身監督が持ち、DF出身監督が持たないもの

 FW出身の監督とDF出身の監督では、どこか性格の違いがあるような気がする。

 DFというのは、いつも最悪のケースを想定してプレーする選手たちだ。一つのミスが命取りになることも多い。一方、FWは楽天的にプレーすべきポジションだ。いくつミスをしてもいい。たった一つのゴールによって、ゲームを決めることができる。

 日本を代表するDFだった井原正巳はもともとFWで、ユース代表時代にDFに転向した選手だったが、井原によれば「DFになってから、自分の性格が変わった」という。

 そんな性格は監督になってからも変わらないようだ。DF出身の監督、たとえば岡田武史と西野や長谷川は、何かが違う。

 もっとも、同じFWであっても、高木琢也大宮アルディージャ監督)と西野や長谷川にも大きな違いがある。

 西野や長谷川は、生まれついてのスターFWであり、豪快な、あるいはテクニカルなシュートで見るものを引き付けた。だが、高木はそういった天才肌のFWではなかった。優れたフィジカル能力を生かしてターゲットマンとしてつぶれ役をこなしたが、華麗な得点シーンで魅せるタイプのFWではなかった。要するに苦労人なのだ。

 監督となってからも、戦術的なディテールにこだわる高木監督と西野や長谷川とではまったく違うのだ(「高木があんなに細かい人間だとは、現役時代には思わなかった」とは、サンフレッチェ広島で同僚だった森保一日本代表監督の言葉だ)。

 もちろん、現役時代のプレーと指導者としてのスタイルが、いつも対応するわけではないが、やはり若い時からFWとしてスターの道を歩いた人物のポジティブさは、指導者になってから選手を育てる時に有効に作用することがあるのだろう。

 世界的に言えば、バルセロナの監督時代に攻撃サッカーで一時代を築いたヨハン・クライフなどが、まさにその典型だろう。

 現役時代の西野朗や長谷川健太はスターではあったが、同時にどこか淡白な性格にも見えた。FWとして、あれほどの才能を持っていたのだ。彼らが、もっと貪欲にプレーし、ゴールにこだわっていたら、もっと多くのゴールを生み出して、あの釜本邦茂に迫るような偉大なストライカーになっていたかもしれない。

 長谷川健太監督が、どれだけ勝負に貪欲になれるのか……。それは、今シーズンのFC東京のこれからにも関わっていくのではないだろうか。

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