■西野朗と長谷川健太の優れた共通点
2018年のロシア・ワールドカップ直前に監督に就任して、日本代表をラウンド16進出に導いた西野朗も似たようなタイプの指導者だ。
日本代表監督としては、就任から大会までに時間がなく、また、大会直前を除いて合宿を一度もできない状況だったので当然のことかもしれないが、細かな戦術指導などはせずに、西野は選手本来のプレーをさせることに集中した。ミーティングでも西野が指示を与えるよりも、選手たちに話をさせることが多かったという。
代表監督としてだけではない。西野は柏レイソルやガンバ大阪など、Jリーグでも実績を残した監督だが、戦術を駆使して戦うタイプの指導者ではない。選手たちに、ストレスなくプレーさせることによって、自分たちの能力を十分に発揮させることがうまい指導者だった。
もっとも、西野は記者会見の席では長谷川監督のように冷静ではない……。
「記者会見の時にグチのようなことを言う監督もいる」と書いたが、これは西野監督のことだ。ほとんど論理性もなく、「あのプレーが……、あそこで……」と一人でしゃべっているのだ。だが、それでも、西野という人は常に自信を持っており、またポジティブなオーラのようなものを発散させている。
西野朗と長谷川健太。大きな共通点は自分に自信を持っており、また常に前向きでポジティブなところだ。
2人の共通点。それは、彼らがサッカーというスポーツが今のような人気競技になる前のアマチュア時代からスター中のスターだったことだ。
西野朗は、浦和高校や早稲田大学時代からの大スターで、多くの女性ファンが西野のプレーを見るためにスタジアムを埋めたし、サッカー専門誌の表紙を何度も飾った選手だった。テクニックを生かしたプレースタイルもそうだったし、甘いマスクも人々を、女性ファンを引き付けた。
長谷川健太は、清水東高校のいわゆる「三羽ガラス」の一人として注目を集めた選手だった。Jリーグ発足前は、高校選手権は日本のサッカーの中でとても重要な大会だった。その大会の最大のスターが長谷川健太だった。さらに言えば“サッカーどころ”清水で長谷川が少年時代からの大スターだったことは漫画『ちびまる子ちゃん』に描かれている通りだ。