2014年シーズンの途中から2019年シーズンまで我らがベガルタ仙台の指揮を執った渡邉晋。
6シーズン通して最終順位こそ1桁に乗せることこそできなかったものの、従来の仙台とは違う姿をピッチの上で表現した。
いい立ち位置を取る――。
相手を動かす――。
ボールを動かす――。
黄金のユニフォームの躍動は、プレーする人間も観る人間も興奮させた。天皇杯準優勝が嬉しさではなく“涙”を呼んだのは、進むべき道の先に優勝があってしかるべきだと感じたからだ。そしてその“進むべき道”は、渡邉が試行錯誤を繰り返した戦術によって引かれた軌跡だった。
他方、その渡邉晋とベガルタ仙台時代にチームメイトだった岩本輝雄は、現役から離れると精力的に“戦術”を追求。現地観戦に対する強いこだわりを持ち、定期的に渡欧しては気になるチームを生で分析している。往年のサポーターにすれば、彼の才能に任せたプレーとはいささかギャップも感じるが、ピッチで起きている現象を見極める目に疑いの余地はない。
かつて、本誌記者が連絡したところ、岩本は偶然、イタリアを訪問中だった。インテルの戦術で気になるポイントがあったため、訪伊したというのだ。そして、「イタリアには俺の好きなものが3つあるからね」と言っていた。その3つとはお分かりだろうか――?
答えは、
3バック――。
カフェ――。
買い物――。
杜の都のファンタジスタは永遠なのだ。
そんな2人が対談。チーム作りや監督論について熱い考えをぶつけてもらった。
(以下、岩本=岩本輝雄、渡邉=渡邉晋、――=編集部)
――チーム作りをするうえで、飛び抜けた選手がいるのと、全員が同じようなレベルのチームって、監督目線でいうとどんな違いがあるんですか?
渡邉 僕が仙台でやってたときは、なるべく誰が出ても同じ意識とレベルでできるようにしていたんです。ただ、今こうやってちょっと離れて、それこそ海外のサッカーをすごい見てると、人の個の特徴をチームの中でどうやって活かすかっていうことがものすごく大事だなと感じますよね。つまり、この特徴をいかしたほうがこの相手と戦ううえでメリットがあるとなったら、そのためにメンバーを変えるんです。メンバーを固定して、ずっと自分達のやり方でやりきるっていうのも、一つのやり方だと思うけど、ほんと世界のトップトップでいくと、次の相手は〇〇〇だから、たとえばインサイドハーフは、この選手よりこの選手の方がいいよなっていうふうにメンバーを変えている。調子の良し悪しじゃなくて、“個の特徴”を活かすための配置っていうのかな。もちろんそれは、大幅なものではなく、微調整になるかもしれないんだけど。
岩本 だから、マリノスが相手だったら、仲川とか早い選手にサイドを破られたら終わりなので、サイドバックに1対1の守備に強い選手を置いたりってことでしょ。そして、マリノスのウイングに決定的な仕事をさせない。そのうえで、相手のサイドバックに対してしぶとく走って、ゲームメイクをさせない、もしくは半減するようにする。そういう選択肢を持つということ。