■渡邉晋「預かったチームの戦力でどうにかしなきゃいけない」

 

渡邉  だからそうなると、みんなで同じように戦術理解をしてやっていきましょうっていう僕のやり方は、勝負に徹しきれないことが出てくる。勝ちきれないって試合が、どうしても多くなってきてしまう。それは今、すごく感じますよね。

 少し前の、リバプールとアトレティコのCL第2戦でいうと、ヘンダーソンをアンカーに置いたじゃないですか。で、チェンバレンをインサイドハーフに置いて、ヘンダーソンからチェンバレンにパスをガンガン出させて、そこから攻めていたじゃないですか。あの配置はもう、あのパスコースを作るためのものだった。だから、調子がいいとか悪いでメンバーを変えていくっていうマネージメントよりも、本当に目の前のゲーム、相手がこうだから、この選手をこうやって使って、そして勝とう、と。それは人を変えることかもしれないし、あるいは戦術の変化でもいいんだろうけど、この時代、お互いのチームが徹底的に分析しているから、どこかの部分で変化をつけたり、ちょっとしたサプライズを生み出していかないと、試合を運べなくなってしまっている。

岩本  だから、さっき話したビジャレアルの練習の話で、ひとつシュート外すと監督がブチ切れるって言ったじゃん。監督は厳しさを分かってるんじゃない? 同じメンバーで同じサッカーやる中で、相手は研究をしてくる。その中で、何回かチャンスができるわけですよ。そのチャンスをいかして勝たなきゃいけない。その状況をいかすことで、ビジャレアルは上位にスペインリーグで入ってたわけだから。相手がどこかにかかわらず、そこで決めきれるか決めきれないかで星の色が白か黒に代わる。極端に言えば、そこを外したら勝ちはないんだから。

――次に監督になったら、そういうことを戦術でやっていきたい?

渡邉  でも、結局預かったチームの戦力でどうにかしなきゃいけないっていうのがありますからね。個の特徴があって、なおかつ、自分の思い描いてる戦術的なものを実践できるメンバーが、はたして、11人しかいないのか、15人いるのか、18人いるのかで、大きく変わるわけです。その人数が多ければ多いほど、組み合わせでいろいろなことができる可能性がある。どんなタイミングでどんなチームを率いるかによって、変わるとは思いますね。

――2018シーズンって、“渡邉サッカー”がけっこういい感じだったような気がするんですけど、手ごたえみたいなのってありました?

渡邉  手ごたえ……。自分の中では、勝ちきれないっていうもどかしさのほうが圧倒的に大きかったですね。ピッチの中でやれることは明らかに増えたし、表現できるものは年々増えていったのはスゴく感じていたんだけど、いくら好転していても勝ちきれなかったら意味がないんです。選手だって、信じられなくなるものがどこかで出てきちゃうと思うんですよね。“本当にこのままでいいのか?”みたいな想いが。あの年は、残り6試合ぐらいのところで6位ぐらいにいたんだけど、その6試合で勝ち点を伸ばしきれなかったのは、まあ、そこがもどかしさというか。天皇杯決勝でも勝ちきれないってとこなんか、もどかしさの方がものすごい残った。だから手ごたえっていうよりは、勝たなきゃダメなんだよなっていう。

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