■2018年の仙台は2シャドーが得点する設計だった

 

――でも、前半戦においては西村拓真選手が得点を量産していました。その影響もあったと思います。

岩本 点を取るって人間がいるかどうかはでかいよ。

渡邉 あのときの仙台のやり方って、シャドーが点を取るっていう形だったんです。1トップじゃなくて、2シャドーが取ってなんぼ。まず設計として、そういうものがあった。

 そのうえで拓真の良さは、まず一つはトライをしてくれること。「こういうとき、ここに立ち位置取ってみて」って言うと、まずはトライしてくれる。僕らはそのトライを、彼自身のためというより、チームに利益を生むためにしてもらっている。点を取る部分は彼の大きな努力があるんだけど、そのトライによって、ちょうど、チャンスをちゃんと迎えられているという成功体験もあった。だから、次のトライにもチャレンジしてくれた。チームとしても拓真にとっても、いいように転がっていった。繰り返すけど、拓真の真摯な姿勢があったからだよね。

――西村選手の穴を埋めるに当たって、素人考えで恐縮ですが、たとえば、似たようなタイプの選手を置くということ、西村選手の得点でも多かった裏に抜けるというタイプを置くということではダメでしたか?

渡邉  裏に抜けるっていっても、一つの動きではないんです。拓真の良かったのは、裏に抜ける角度だったんです。裏に抜けようとする選手にとって、相手ディフェンダーと自分の周りの選手との関係性が大事になる。どう引き付けて、そして、どう他の選手のコースを残すか。そこの判断を間違えると、選択肢はすごく少なくなる。たとえば、ここに相手ディフェンダーがいて………そうすると、ボールの出し手にとって選択肢が最低でも2つは確保できる………相手に迷わせながら、自分がポジションを決められる………(機密事項なので割愛)。

――それは西村選手の特徴?

渡邉  これは、チームとしてキャンプの2日目くらいにみんなでやるんです。センターバックまで含めて。マーカーを置いた状況で、出し手にも「ここに落とせばいいよ」と。そこからはとにかく練習。あとはタイミングでパッって蹴れる時に走らないとオフサイドになっちゃうし。そこのトレーニングはずっとしてました。

岩本  周りを見るってことでいえば、うまい人ほど、結果を出している人ほどよく見ているよね。バルサの試合を何試合か見たんだけど、そのうち、90分間メッシしか見ないときもある。ゴール前でどう動くか、どれだけ首を振っているのか。ボールもらう時ってだいたい1回首を振るんだよね。でもメッシって、ボール受ける前に5、6回も首振るから。すげえな。こんなに振るのか、って。どこに誰がいるかとか、どんだけプレス来てるか全部見てるもんね。

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