■追放論を吹き飛ばして国の英雄に

 もうひとりの8連覇男、ビダルにもこうした強さがある。

 忘れられないのが、私も現地取材した2015年、チリでのコパ・アメリカだ。

 この大会中、ビダルは派手な事故を起こす。夜中にカジノに出かけ、その帰り、飲酒運転で真っ赤なフェラーリを大破させたのだ。幸い、本人と同乗した妻は奇跡的に無事だったが、本人は逮捕され、国内には代表追放論が吹き荒れた。

 ところがビダルは号泣会見を経て、すぐさまチームに復帰。キン肉マンと一部で呼ばれる、あの髪型で号泣する様子に追放論者は腰砕けになり、なし崩し的に許されてしまった。そして不死身の男は獅子奮迅の働きによって、チリに初優勝をもたらした英雄となった。

 100年間勝てなかったチリにコパ・アメリカ2連覇をもたらし、ヨーロッパでも勝ち続けるビダル。すでに33歳となった彼は、ベンチを温める機会も増えたが、メッシの用心棒として右サイドでにらみをきかせる。

 勝つ術を知る選手、または勝ち運のある選手を、ブラジルでは“熱い足”と呼ぶ。ビダルがまさにそうだ。

 息苦しいがまん比べの様相を呈してきた、宿敵レアルとのマッチレース。バルサにとって最後に頼りになるのが、この男かもしれない。

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