ドイツ代表とラツィオの縁

 実力と実績がありながらフリーエージェントとなる選手は30代が多くなるため、26歳のフレイザーや27歳のクルザワ、28歳のムニエは貴重な存在だと言える。そうした“若手”の中で注目を集める一人が、ドルトムントFWマリオ・ゲッツェだ。

 10代にしてドルトムントの主役の一人となり、ドイツ代表にも入った。2014年にはワールドカップ(W杯)で優勝を決めるゴールも決めている。だが、そのシーンをハイライトとして、下降線から抜け出せないとの見方が強い。

 裏切り者となってまで移籍したバイエルン・ミュンヘンから出戻ったのは、4年前のこと。幼少の頃から育てたドルトムントは可能性に賭けたが、かつての輝きがまぶしすぎるゆえか、期待に沿う復活を遂げてはいない。スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクは6月を前に、今夏限りでゲッツェを手放すことをついに明言した。

 ただし、捨てる神があれば、当然拾う神もある。ゲッツェ獲得に手を挙げているとされるのが、今季のイタリアで旋風を巻き起こしているラツィオだ。

 ラツィオは現在、首位ユヴェントスと勝ち点1差の2位につける。3位インテルには勝ち点8差をつけており、現在中断されている今シーズンがどのような形で終了しようとも、来季のチャンピオンズリーグが視野に入ってくる。

 ラツィオのファンにとっては、ゲッツェは甘美な思い出を想起させる選手かもしれない。2011年、ラツィオは移籍金ゼロでドイツ代表を獲得した。バイエルンからやって来た、ミロスラフ・クローゼである。33歳にして初の国外移籍に挑んだクローゼだったが、すぐさま結果を出してファンの心をつかむと、5シーズンにわたって主力としてプレー。ラツィオの歴代最多得点外国人選手となり、スパイクを脱いだ。

 ゲッツェがW杯制覇へ導くゴールを決めた試合は、クローゼのドイツ代表ラストゲームでもあった。0-0で迎えた88分、クローゼが退き、交代でゲッツェがピッチに飛び出した。それから20分も経たずして、歴史が動いたのだ。

 この2人に何か「縁」があるというのならば…。ラツィオがまたも運命の交錯する場所になったとしても、おかしくはない。

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