■パンツをはき忘れたライオン
そしてワールドカップは2つめの世紀にはいる。21世紀の最初の10年の2大会は、「マスコット受難の時代」と言っていいかもしれない。2002年日日韓大会の「キャズ、……あと何だったけ?」に続いて、2006年ドイツ大会の「ゴレオ6世」と名づけられたライオンも、地元の人びとのごうごうたる非難にさらされた。立派な体に背番号「06」のドイツ代表ユニホームを着、しゃべる顔をもったサッカーボールを手にしたゴレオ6世くんは、押し出しはとても立派だったのだが、残念なことにパンツを履き忘れていたのだ。
2010年代になると、生い立ちもやや複雑になる。2010年南アフリカ大会のマスコットはヒョウの「ザクミ」。笑うとやや不気味だったが、割と認知度は高かった。しかしグッズ化の権利を得た南アフリカの会社が制作をすべて中国の企業に任せてしまったため、南アフリカ国内の雇用機会を奪ったと、今日的な問題になった。
2014年ブラジル大会はアルマジロのフレコ。体を丸めるとボールのようになることができるのが自慢だった。「フレコ Fuleco」の名前は「フットボール」と「エコロジー」をかけ合わせたという、やはり今日的なものだった。
そして2018年ロシア大会のマスコットはオオカミの「ザビバカ」。特徴はサッカーをしているのにゴーグルをはめていること。制作者によれば自転車用のゴーグルであり、「ザビバカはあまりに速いので、目の保護のためにゴーグルが必要になったんだ」とのこと。これまでのマスコットと比較するとやや不良っぽい雰囲気が受けたのか、人気は高かった。