ポジティブなことのはず
新型コロナウイルス(CCVID-19)の感染拡大によって延期され、2021年7月に開催されることが決まった東京オリンピック。出場を予定していた選手たちは「目標」が決まったことで一安心はできたろうが、現在は練習もままならない状態にあるだけに、来年の大会に向けて再びピークを合わせるという難しい調整が待っている。
つい先日には、2016年リオデジャネイロ大会の男子ボートで金メダルを獲得した英国のトム・ランスリー選手が「1年延期」の決定を受けて引退を決めたというニュースが伝えられた。現在34歳で2020年大会を最後に引退を決意していたランスリー選手にとって、これから1年コンディションを維持することはフィジカル的にもメンタル的にも難しい選択だったのだろう。
日本でも、同じく34歳の三宅宏実選手(女子重量挙げ)の「1年はちょっと長い。2年だったら諦めていた」というコメントが印象的だった。年齢の高い選手にとっては、さらに1年間戦えるコンディションを維持し、戦うための気持ちを持ち続けることは大変な負担となるのだ。
同じ「1年延期」といっても、それぞれの選手によってその影響は大きく異なる。
若い選手、たとえばフロリダ大学に留学し、環境を変えて飛躍を目指している陸上競技単距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手などはまだ21歳であり、1年の延期によってさらに実力を高めてオリンピックに挑むことができる。
さて、ご承知の通りオリンピックの男子サッカー競技は「23歳以下」の大会である。つまり年齢的に若い選手たちなのだから、彼らにとって1年延期は基本的にはポジティブなことのはずだ。
もっとも、1997年生まれの候補選手たちにとっては参加資格の行方が気になっていたことだろう。彼らは2020年大会にはU-23代表の主力として参加するはずだったのだが、2021年には24歳となってしまうのだ。出場資格は与えられるのか否か……。
結局、4月3日になって国際サッカー連盟(FIFA)の作業部会が2021年の男子サッカーの出場資格を当初の通り「1997年以降生まれ」とすることを決めた。つまり、2021年大会の男子サッカーはU-23ではなく、U-24代表による大会になるのだ。
これで1997年生まれの選手たちが参加できることが確定した。
そこで、今回はオリンピックの男子サッカーが24歳以下の選手で争われるようになったことによって、大会自体がどうなるのか、あるいは日本代表のチーム作りにどのような影響があるのかを考えてみたい。もちろん、大会までまだ1年以上もあり、未定の部分も多いので、あくまでも現段階での「思考実験」としての考察である。