(この記事は2017年6月13日に発行された『サッカー批評86』(双葉社)に掲載されたものです)
文◎マルタ・エステーヴェス Martha Esteves
翻訳◎大野美夏 Mika Ono
撮影◎ガブリエル・エステーヴェス Gabriel Esteves
2018年W杯で復権を果たすカギとは
――そして現在、チッチ監督が就任して一度はどん底にあえいだセレソンが復活しています。チッチ監督の率いる新セレソンの強みの一方で弱み、課題などは見えますか?
「2018年までの課題は、選手達の“頭の中”だ。今の状況に満足をしてはいけない。南米予選で上手くいったことが、ロシアW杯で同じように起こることはないと心を戒めること。南米予選とW杯本戦は全く別物と理解していないといけない。また、フレンドリーマッチの結果が良いからといって勘違いしないこと。欧州の強豪とのフレンドリーマッチで勝ったとしても、W杯になれば違う戦術で向かってくることを分かっていないといけない。W杯までにどのチームも様々なテストを繰り返して、引き出しを増やしてくる。ブラジルはフレンドリーマッチでも全力で戦おうとするが、欧州の代表はかなり力をコントロールしている。テストマッチはあくまでも、結果にこだわるのではなく、相手を研究して様々な布陣や組み合わせなどをテストするための練習試合であることを理解することが大事なんだ。一番肝心なのはW杯本戦。ブラジルサッカーが他国に追いつかれているといわれるが、セレソンは自分の手の内を簡単に見せて、相手に有利な情報を与えてしまっていることも大きい。この点はもう少し注意しないといけない。“やっと”チッチ監督が監督に任命されて、4年の準備期間中の半分を失っているという意味では遅いスタートとなったが、正しい道を歩んでいると思う。本来は、2014年W杯の直後に、ブラジルが誇る最も優秀な監督としてセレソンの監督に選ばれるべきだった。遅い就任となったが、これまで積み上げてきた知識とその優秀さでわずかな時間の中、一つ一つの試合で確実にチーム作りをしている。私はチッチのファンなだけに、チッチのセレソンが上手くいっていることを見るのは心から嬉しい」