――すでにブンデスリーガ優勝は決めています。その立役者はやはりハインケス監督でしょう。彼の素晴らしいところは?

「選手とマンツーマンでしっかりコミュニケーションをとれるところです。例えば、ロッベンとリベリは扱いが難しい選手。試合に出られないと怒りますからね(苦笑)。二人に限らず、あのチームにはプライドの高い選手ばかりが集まっている。誰もがプレー機会を求めているんです。そのあたりのマネジメントが、ハインケスはすごく上手。先発で60分使った選手を次はベンチに入れて、最後の30分だけ使う。そういうのが上手い。それから、とても人間的なところも長所です」

――といいますと?

「最近はデータばかりに注目する監督が増えました。パスやドリブル、ヘディングの数値がいいとか。でも、人間的な部分をもっと考えるべきでしょう。バイエルンが強いのはフロントの良さも挙げられます。へーネス(会長)とルンメニゲ(CEO)のコンビネーションが素晴らしいです。フロントに真のプロフェッショナルが揃っているから、下も上手く機能するんです。昔はたまにつまらなかったけど、サッカー自体も面白くなりました」

――この数年でポゼッション志向が強まりましたね。

「いや、ボールポゼッションだけじゃない。ポジショニングがいいですよ。特にトライアングルの作り方が面白い。例えば、リベリがサイドでボールを持つと、絶妙なタイミングでボランチがサポートする。もちろん、誰もがボールをキープする力を持っていますし、相手にプレッシャーをかけられてもナーバスにならない。それから3~4人のコンビネーションも見応えがありますし、ミュラーの常にハングリーなところも良いですよ。レヴァークーゼン戦では4-1になっても、相手へのプレッシャーを怠らず、もう1点奪うんだという意志を示していました」

※第4回に続く

(この記事は2018年5月25日に発行された『サッカー批評89』(双葉社)に掲載されたものです)

ピエール・リトバルスキー

1960年4月16日生まれ、ドイツ・ベルリン出身。78年、ケルンでプロデビュー。10 番を背負ってキャプテンを務める。ドイツ代表としてW杯に3回出場し、優勝1回、準優勝2回。Jリーグ初年度の93年にジェフユナイテッド市原に移籍。日本で通算4年間プレーした後に現役を引退した。横浜FCを皮切りに監督やコーチを経験し、2010年より働くヴォルフスブルクではアシスタントコーチ、代理監督を経て、現在はチーフスカウトを務める。

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