木之本 一つの法人として経営しているわけですから、「来年クラブがどうなるか分からない」じゃあサッカーにも身が入らない。経営面での目に見えない、我々の知りえないところでは相当ご苦労されていることを知るとそう感じますね。本当に経営が分かっていないと手出しできないことですし、そこまで基盤を作られたということは我々が全く知りえないことでした。
村井 Jリーグの創設に関しては、川淵さんや木之本さんはじめ、多くの方々の協力があったと思います。そして、川淵さんや木之本さんらが立てられた理念を具現化している、地域密着型やホームタウン活動ですが、Jリーグは年間で全クラブで4000回以上も学校を訪問したり介護施設に行ったりと、数多くのホームタウン活動をしています。1クラブが年間100回近くやっている。収益を上げようと思ったら、短期的には利益を生まないホームタウン活動を削ればよいのですが、Jリーグには、先輩たちが創った理念があることを忘れてはいけません。むしろ逆に、クラブライセンス制度ではホームタウンを定義して、そのホームタウン活動の上にファイナンシャル・フェアプレーも求めている。各クラブは、すごく重い十字架を背負いながらやっている。だけどもその素晴らしい理念をずっと変えずに守って来たことを引き継がなきゃいけない。つまり、経営も理念の延長線上にあるのではないでしょうか。そのことを抜きにJリーグの検証はできません。
木之本 村井さんのお話しの中で「検証」という言葉が出てきましたね。やはりそういう組織じゃないと。昨今は、いろんな問題が起こると外部の第三者委員会を作って、外部の意見を聞いてということをやるわけですけど、その前に自浄努力はどうしたのということを疑問に思うわけです。しかし村井さんは自ら「検証」しようとしている。それはもの凄く素晴らしいこと。自らが常に謙虚にならないと、検証はできないですよ。今の幹部職員の努力の賜物でしょう。