予算が大きくとれない地方クラブ、それでもセルヒオ・ラモス、ヘスス・ナバス、ラキティッチ、バネガ…放出したメンバーを考えるとCLでも十分に優勝を狙えるメンバーが完成してしまう。サポーター心理としては放出の必要性を分かっていても気持ちをしっかりと整理するのが難しいものでもある。だからこそ、新しくチームに加入した清武にも大きな期待がかかるのは当然のこと。では、モンチはここまでの日本代表MFをどう評価しているのだろうか。
「清武を獲得したのは純粋に戦力として考えたもので、マーケティングやアジア市場などを特に考えたものではない。もちろん、そういったものが付随してくるのであればありがたいことだが、何度でも言うが、純粋に戦力としてのものでしかない。バネガの代わりとメディアは話しているけども、中盤でしっかりとボールをキープができて、ためを作りラストパスを出せるというプロフィールを持っている選手だから獲得に動いた。
ここまで(リーガ第5節まで:3試合出場1得点2アシスト)のパフォーマンスには満足だ。だが、もっとやれる選手だと自分たちは信じている。清武のことで何よりも驚いたのはチームへの適応の早さ。スペイン語を話せない外国人選手の多くは最初、言語で苦労するものだし、新しい街、新しいサッカーに適応するのは簡単ではない。しかもセビージャはチーム全体が新監督のもとでゼロからスタートしている。だが、清武はチームに溶け込もうという意思を自ら見せ、驚くほど早くセビージャの一員となっている。
彼とは英語でコミュニケーションをしているが、チームとしては早くスペイン語を習得できるように家庭教師を準備しているところだ。清武でなくSDの自分には選手の人生を預かったというとても大きな責任がある。だからできる限りのサポートをどの選手にもしているつもりだ」
ラモン・ロドリゲス・ベルデホ
通称モンチ。人生の半分以上となる29年をセビージャで過ごしているスポーツゼネラルディレクター(肩書きは本人談)。10年間の現役時代はマラドーナやシューケルといった世界のスーパースターとロッカールームを共有していたが、今では欧州のビッグクラブがロッカールームのメンバー編成を託したいと願うスーパーSD。発掘した無名選手がチーム退団時に高額の違約金をクラブに残していくことから、セビージャの現代のミダス王(ギリシャ神話に登場した触るもの全てを金に変えることができた王)と経済誌からも賞賛を受けている。
※第4回に続く
(この記事は2016年10月28日に発行された『サッカー批評83』(双葉社)に掲載されたものです)