(※この記事は2016年10月28日に発行された『サッカー批評83』(双葉社)に掲載されたものです)
文・山本孔一
清武弘嗣の移籍によって、日本でも注目度が急上昇しているラ・リーガのセビージャF C。クラブ規模はバルセロナやレアル・マドリードほど巨大ではない。だが、ブレイク前の有能選手をオーガナイズすることで常に強豪であり続けている。そのメソッドは、今や「セビージャに移籍すれば成功が約束される」とまで言わしめるほどだ。そんなクラブの象徴と言えるのがSDであるラモン・ロドリゲス・ベルデホ、通称モンチ。彼にSDの真髄を激白してもらった。
強いセビージャを維持し大きくしていくこと。大金を投資して世界トップクラスの選手を獲得すればタイトルを争える強いチームになれることは、チェルシーやマンチェスター・シティ、PSGが体現している。だが、セビージャには大金を投資してくれるロシアの実業家もアラブの王族もいない。また、モンチが現役を引退するころ、チームは経営難から下部カテゴリーへの降格を義務づけられた過去がある(サポーターのスペイン国内を巡る抗議行動などから取り消された)。また、バレンシアやデポルティーボ・ラ・コルーニャといった大きなスポンサーを持たない地方都市のクラブが没落していく様を目の当たりにしてきた。だからこそ、モンチは強いチームだけを目指すのではなく、健全なクラブであり続けることを一番に考えている。