モンチ
モンチ 写真:MarcaMedia/アフロ

(※この記事は2016年10月28日に発行された『サッカー批評83』(双葉社)に掲載されたものです)

文・山本孔一

 清武弘嗣の移籍によって、日本でも注目度が急上昇しているラ・リーガのセビージャF C。クラブ規模はバルセロナやレアル・マドリードほど巨大ではない。だが、ブレイク前の有能選手をオーガナイズすることで常に強豪であり続けている。そのメソッドは、今や「セビージャに移籍すれば成功が約束される」とまで言わしめるほどだ。そんなクラブの象徴と言えるのがSDであるラモン・ロドリゲス・ベルデホ、通称モンチ。彼にSDの真髄を激白してもらった。

偶然に就任、開花したSDの才能

 メルカドのゴールで7戦連続無敗(6勝1引き分け)と無失点を達成したセビージャダービーの始まる10時間前。サンチェス・ピスフアンのクラブ事務所に、約束の時間からちょうど1時間遅れてセビージャのSDモンチが姿を見せた。コンディション維持のため、毎朝通っているジムの成果か、浅黒く引き締まったその体は現役時代よりも精悍さを兼ね備えているように感じた。「遅れて申し訳ない。今日はダービーだからばたついてしまっていてね」とまるでいたずらがばれた人懐こい少年のような笑顔で迎え入れてくれた。

「モンチ」ことラモン・ロドリゲス・ベルデホは、スペイン南部に位置するアンダルシア州カディス県のサン・フェルナンド出身。サッカー選手としてセビージャで現役を終えた人物だ。世界的にまだ認知されていない実力ある選手を発掘するその力を高く評価されており、今では欧州そして世界で一番の(スポーツディレクター)SDと呼ばれている。だが、その始まりはただの偶然でしかなかったと本人は振り返る。

「SDに就任したのは本当に偶然の出来事だ。肩の負傷で現役を引退した時、クラブから試合時のチーム責任者のポストをしてみないかといわれた。現役時代から法律を勉強していて弁護士になろうと思っていたけど、ずっと世話になっていたクラブからのオファーだったので、その職務を引き受けた。そのあと、今の職務に就くことになった。当時のチームは1部と2部を行ったり来たりと決して安定した状況じゃなかったから、人手も足りなかった。そこに偶然法律を勉強していた自分がはまった形だね」

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