■奇跡の「37分間」が生中継! 五輪アルゼンチン撃破がもたらした衝撃

 1964年に開催された東京オリンピックでも、日本の初戦、10月14日のアルゼンチン戦がテレビ中継に乗ったものの、「完全中継」ではなかった。衛星チャンネルなどなく、オリンピック中継の中心となったNHKも「総合放送」と「教育放送」の2チャンネルしか持たない時代、放送できる競技は限られていた。駒沢競技場で行われたアルゼンチン戦の中継が始まったのは、0-1とリードされて迎えた後半8分のことだった。

 だが、これはまさに日本サッカーにサッカーの神様が与えた「黄金」のタイミングだった。放送が始まってわずか1分後、アナウンサーがまだ日本のメンバーを紹介しているさなかに、MF八重樫茂生のロングパスを受けたFW杉山隆一がアルゼンチンの守備ラインを突破、見事に同点ゴールを決めたのだ。

 その後、アルゼンチンに勝ち越しゴールを許したが、日本はあきらめない。後半36分、左サイドを杉山とFW釜本邦茂で攻略、釜本がゴールラインまで進んで送ったボールを、右外から走り込んだFW川淵三郎がヘディングで再び同点とするゴール。1分後には左サイドで杉山が相手パスをカットして前進、ファーポスト前にクロスを送ると、走り込んだ川淵が後方に流したボールをMF小城得達が蹴り込んで3-2の劇的な逆転勝利をつかんだのである。

「アディショナルタイム」などなかった。NHKはわずか37分間を放映しただけだったが、サッカーの魅力をこれ以上ないほど見事に日本国民に伝えた。名前は知っていても、実際に見たことなどなかった「サッカー」という競技に、多くの日本人が初めて接した試合だった。オリンピック後、雨後のタケノコのように全国各地に少年サッカースクールが誕生し、1968年のメキシコオリンピックに至る「サッカーブーム」を迎えるのである。

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