蹴球放浪家・後藤健生はサッカーを追って世界を巡る。その道中で、各地に共通する建築物を目にしてきた。それが「凱旋門」である。どうして、人は凱旋門に引かれるのか…。
■世界最大の凱旋門
トランプ凱旋門は「世界最大」を目指すようですが、現存の凱旋門の中で最大なのは北朝鮮の首都、平壌(ピョンヤン)にある凱旋門(ケソンムン)でしょう。
高さは60メートル。初代の指導者、金日成(キム・イルソン)主席の生誕70周年を記念して、1982年に息子の金正日(キム・ジョンイル)が建設したものです。
この凱旋門は、北朝鮮代表のホームとして使用される金日成スタジアムの正面にそびえ立っています。
僕は、1985年の4月にメキシコ・ワールドカップ予選の北朝鮮戦を取材に平壌に行きました。試合や練習の取材のために金日成スタジアムには何度も行きましたから、ここの凱旋門も連日のように目にして過ごしました。
凱旋門がこの場所に建設されたのは、意味のあることでした。
北朝鮮では、金日成は「満州(中国東北部)での抗日戦争を勝利に導いた偉大な指導者」ということになっています。しかし、実際の金日成(本名、金聖柱=キム・ソンジュ)は抗日闘争に敗れてソ連に逃亡しています。そして、終戦までソ連軍の大尉として沿海州で過ごしていました。1945年に日本が敗れてソ連が朝鮮半島北半部を占領することになった時に、ソ連に都合の良い指導者として北朝鮮に送り込まれたのです。
帰国した金日成は1945年10月に開かれた「ソ連解放軍歓迎平壌市民大会」で初めて国民の前に登場して演説を行いました。
その場所が、当時朝鮮を支配していた日本の総督府が建設した牡丹峰(モランボン)競技場でした。金日成スタジアムは、その牡丹峰競技場を全面改築したもの。つまり、ここはまさに「金日成が凱旋した聖地」というわけなのです。












