蹴球放浪家・後藤健生も、旅先で悩むことがある。食事がマンネリ化してしまうのだ。外食になるため、特に外国では無難なものを選びがちになる。だが、アジアで初めてワールドカップが開かれた年、蹴球放浪家は自分に難問を課した。地元メシによる自分の食事の「完全制覇」だ。
■山村で山羊肉と出会う
もう、暗くなっていました。
タクシーが村に到着すると、あちこちの店からおばさんたちが飛び出してきて、「うちに来い」と腕を引っ張ります。かなり、強引な客引きです。
別にどこの店に行っても、変わりはないでしょうし、どこがいいのだか、情報もありません。あまりに強引な客引きは嫌だったので、ちょっと大人しい感じのおばさんについて行くことにしました。
店(レストラン)というより、普通の農家のようなところで、その離れみたいな座敷に通されました。テーブルの上には大量の「パンジャン」(キムチなどのおかず類)が並べられましたから、それをつまみながらソジュ(韓国式焼酎)を飲んで待っていると、メインのフギョムソ(黒山羊肉)の皿が運ばれてきました。
山羊肉は、沖縄を除く日本ではあまり食べる習慣がないようですが、中東や中央アジアなどではポピュラーな食材です。味はしっかりしていて、脂は少な目といった印象です。
その黒山羊をつつきながら、またソジュのグラスに手が伸びます。こうして、山村の夜は静かに更けていきました。















