■ピストルを突き付けられて「失ったモノ」

 では、当時、北朝鮮に行くときはどうするのかというと、有効なパスポートを一度預けて、代わりに北朝鮮用の1次旅券を取得するのです。

 1985年4月のメキシコ・ワールドカップ予選を観戦するために北朝鮮に渡ったときのパスポートも手元にありますが、「中華人民共和国、ソビエト連邦、朝鮮民主主義人民共和国に有効」と書いてあります(北朝鮮旅行は中国かソ連経由になるので両国も含まれています)。

 こうして、僕の手元には1972年の1次旅券からもうすぐ終了のものまで、合計11通のパスポートが残っていますが、ただ、1通、1997年1月発行のパスポートだけがなくなっています。2001年にアルゼンチンに行ったときにピストルを突き付けられて鞄(カバン)ごと盗まれてしまったのです(ブエノスアイレスの南、リアチュエロ川を渡ったドックスードという最も治安の悪い地区での出来事でした=蹴球放浪記第10回「ホールドアップ」の巻)。

 そのパスポートには、当時はほぼ鎖国状態だったサウジアラビアの緊急ビザをはじめ、数多くの珍品ビザが添付されていたので、このパスポートの盗難は一生の痛恨事なのです。

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