■ブラジルは「13倍」、ドイツは「2倍」、日本は?

 2014年のワールドカップ・ブラジル大会のときにレシーフェで泊まったのは大通りに面した2階建ての小さなホテルだったが、1室「1万3000円」という安さにつられて予約した。部屋に入ると、ベッドだけでいっぱいの小さな部屋の窓には鉄格子が入っていた。「泥棒対策」だったのだろうが、牢獄に入った気分だった。

 このホテルは、近くのビーチでサーフィンを楽しむ若者たちを想定して経営されていたものらしい。好奇心から、ワールドカップの翌月の予約サイトを開くと、なんと1泊1000円だった。「13倍」もの「ぼったくり」であったのだ。

 ドイツに行くと、ホテルのドアの内側に「繁忙期/通常期」と分けられて部屋のレートが記された紙が貼られている。それを見ると、その町で博覧会があるようなときには、通常期の2倍の宿泊料となっている。フランスやブラジルと比較すると、これなどとても「フェア」であると感じた。ただ日本では、「繁忙期」でも宿泊料自体は変わらないというのが商慣習だったのである。

 もちろん、特別な時期(年末年始、ゴールデンウイーク、年末年始など)には「特別料金」が設定されることはあったが、それ以外は、「ハイデマンド(需要が多い時期)」だろうが「ロウデマンド(需要が低い時期)」だろうが宿泊料は変わらないというのが、日本の宿泊施設だった。

 そこに登場したのは現在、日本代表の「パートナー」となっているホテルチェーンである。このチェーンが、外国並みの「変動料金制」を導入した。普通なら1泊5000円のところが、「ハイデマンド」の日には2万円を超すことも珍しくない。そして、それがどんどん他のホテルチェーンなどにも広がっているようだ。

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