
サッカー日本代表の10月シリーズが終了した。何より目を引いたのは、ブラジル代表相手の史上初めての勝利だったが、今回の活動はワールドカップ優勝を目指す日本代表にとって、どのような意味があったのか。サッカージャーナリスト後藤健生が、10月シリーズの「収穫と課題」について検証する。
■ブラジル戦で見えた「恐怖感」
日本代表がアジア最終予選突破を決めた直後から取り沙汰されているのが、両サイドのウィングバック(WB)として伊東純也や堂安律、三笘薫といった「攻撃的」な選手を配置することの功罪である。
アジア予選では、日本は中国やインドネシアなど格下の相手にWBを含む2列目の選手の個人能力の高さを生かして大量得点を重ねた。だが、「強い相手にもその形が通用するのか」という疑問が生じたのである。守備の専門家ではないアタッカー陣が、相手の強力な攻撃力にさらされたら危険ではないのかという、もっともな疑問だ。
だが、その後の日本代表の準備試合での選手起用を見る限り、チームを率いる森保一監督はワールドカップ本大会でも攻撃的選手を使った3バックを使い続けるつもりのようである、確信犯的に。
ワールドカップ優勝経験国の中で、日本代表がまだ一度も勝ったことがなかったブラジル代表相手の試合でも、日本は右に堂安律、左に中村敬斗という攻撃的WBを配して戦いを挑んだ。
ただ、前半を見る限りは、日本代表の監督、スタッフ、選手たちにもWBのポジションに疑問、あるいは恐怖感があったように感じた。
試合開始直後に、日本は前線からプレッシャーをかけにいった。
たとえば4分には左のシャドーの南野拓実、右のシャドー久保建英、そして右WBの堂安が連係して相手守備陣にプレッシャーをかけてミスを誘発する場面もあった。
しかし、日本代表は時間の経過とともに、引き気味になっていく。そして、26分と32分に連続失点を喫する。