■ケガとの長い戦いを物語る「膝のテーピング」
攻撃を牽引する山本と塩越が1アシストずつを記録したベレーザが攻撃の質の高さを見せて前半を終えたが、後半に入ると決めきれない時間が続く。
すると69分、大宮は大島暖菜と井上綾香を投入して反撃態勢を強める。直後、中盤でのアバウトなボールの弾き合いから大宮の選手たちが一気に前への勢いを出してエリア内への進入に成功し、決定機が到来した。シュートはGKの清水美紅が弾いたものの、それに詰めたのは大島。投入直後にネットを揺らし、スコアを2-2とした。
ベレーザは74分に猶本光を投入。膝のテーピングが、ケガとの長い戦いを物語っていた。
なでしこジャパンで活躍し、その美しい容姿もあって、一部マスコミから“サッカー界の長澤まさみ”と呼ばれ、人気を博した猶本。2024年1月に左膝前十字靭帯を損傷し、1年後の2025年1月18日にようやく復帰を果たすも(皇后杯準決勝、浦和vsINAC)、再び痛めてしまい、移籍したベレーザでは、これまでベンチ入りもかなわなかった。
「(自身も浦和にいたため)ケガの経緯も知っていますし、かなり時間がかかってすごく苦しい思いをしていることもわかっています。なので、今回メンバーに入れられる、ゲームに使える、という手応えを得たときは嬉しかったです」(楠瀬直木監督)
初めは塩越よりも前の位置で樋渡と並ぶような高いポジションをとっていたが、眞城と伊藤琴音が左サイドで、山本が右サイドで、とボールの前進がサイドで行われる形になっており、なかなか中央にボールが回ってこない。
その後、猶本が1列下がるような形で右サイドの山本と絡むようになると、ベレーザの攻撃がゴール前に迫るようになっていった。持ち込んだ山本や伊藤がそのままシュートを放つ場面や、エリア内の樋渡や塩越へ通れば決勝点という場面があったものの、結局ゴールは生まれず、試合は引き分けに終わった。
2試合連続の引き分けとなり、楠瀬監督は「2分は1勝1敗よりも勝点が低い」と、優勝を目指すチームらしい悔しさを言葉にした。
勝点を失っただけでなく、内容としても、課題だった部分での2失点というもどかしいものになった。
猶本の出場は、ケガからの復帰やベレーザでの初出場というめでたさだけでなく、そこの解消のためにも明るいニュースだ。
「プロフェッショナルなメンタルを持った猶本が復帰してくれるのは、このチームにとって大きいこと」と楠瀬監督は期待する。
猶本は喜びではなく「どうしても勝ちたかった」「すごく不完全燃焼」と悔しさのコメントを残した。
塩越が試合を重ねながらチームにフィットしたように、ベレーザはここから猶本とともに新しい勝負強さを備えていくことになるのだろう。
■試合結果
RB大宮アルディージャWOMEN 2-2 日テレ・東京ヴェルディベレーザ
■得点
3分 齊藤夕眞(大宮)
20分 樋渡百花(ベレーザ)
32分 坂部幸菜(ベレーザ)
69分 大島暖菜(大宮)



