進言すべきだった「やり直し」、出すべきだった「イエロー」、改めて考えたい「バニシングスプレー」の意味【J3福島VS讃岐戦が突きつけた「現代サッカー」の大問題(2)】の画像
貴重な勝ち点1を得るチャンスを失ったかもしれないカマタマーレ讃岐。どういうことか? 撮影/中地拓也

 J3の試合で、どうにも釈然としないゴールが生まれた。勝敗を決するものではなかったが、けっして軽視していいものではない。サッカージャーナリスト大住良之が、このゴールの解釈を通じて、Jリーグを含む現代のサッカーの「問題点」に警鐘を鳴らす!

■審判団は「もう少し冷静になっていれば」

 佐藤宥第4審判も、井手本副審とほぼ同じ距離にいて、プレーを見ていた。井手本瞭副審が旗を上げなくても、佐藤4審が主審にキックのやり直しを進言するべきだったと思う。そして矢島輝一にはイエローカードを出すべきだったと私は考えている。

 主審がキッカーにキックを促す笛を吹いたことは、守備側選手が規定の距離を離れていなかったこととは関係がないはずだ。ルールには、「すべての相手競技者は(中略)少なくとも9.15メートル(10ヤード)ボールから離れなければならない」(第13条第2項)と明記されている。矢島はゴール前をめがける江口直生の右足キックのコースにきっちりと入っており、しかも明白な距離不足であることは誰の目にも明らかだった。

 はっきりと書いておきたいが、この記事は、瀬田貴仁主審をはじめとする審判チームはもちろん、讃岐の江口だけでなく福島の矢島も非難することを目的とするものではない。審判団には、「もう少し冷静になっていれば」という思いはあるが、試合終盤の緊迫した中で思いがけないことが起こり、それがルールとどう関係するのか、整理するのがやっとだっただろう。

 讃岐の江口は、もう一度アピールしてきちんと10ヤード離すように求めるべきだっただろうか。そうすればよかったのはもちろんだが、「5分」と示されたアディショナルタイムが6分を過ぎ、ぐずぐずしていたら終了のホイッスルを吹かれてしまうかもしれない。その心理を考えれば、あの時点でキックに踏み切ってしまったことも理解できる。

 そして矢島の行動とプレーも、現在のサッカー一般で行われていることからすれば、非難には当たらない。彼自身はボールに背を向け、妨害するための行動は何も起こしていない。

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