■ラストパスへの布石
開始早々のピンチをしのいだ磐田は、8分にスコアを動かす。
自陣センターサークル付近でパスを受けたリカルド・グラッサが、ピッチ中央から左斜めへランニングするグスタボ・シルバへ縦パスを通す。その直前に1トップの佐藤凌我が左前へ落ちたことで、相手の右CBもついてきていた。それによって生まれたスペースへ、グルタボ・シルバが走り込んだのだった。
グスタボ・シルバはペナルティエリア内左でボールを受け、ヘディングで押し出して相手GKと入れ替わる。無人のゴールへボールを蹴り込み、磐田が先制点をあげたのだった。
夏のウインドーで加入したグスタボ・シルバは、この日が3試合目の出場で、スタメンは初めてだった。水戸からすると情報が十分でなく、特徴をつかみきれていなかったところはあっただろう。
この場面でもうひとつ触れるべきは、左ウイングの倍井謙だ。磐田陣内でマイボールになった瞬間に、DFラインの背後を狙ってランニングしている。その動きを見た水戸の右MF加藤千尋が、倍井を追いかけて自陣へ戻った。その直後に、リカルド・グラッサへパスが入っている。
このブラジル人CBがパスセンスに優れるのは、どのチームも分かっているはずだ。アシスト数は少ないものの、攻撃の糸口や崩しにつながるパスは多い。倍井のランニングに対応したことで加藤が間合いを詰め切れず、リカルド・グラッサはフリーでパスを出すことができたのである。