■自己責任論で「非難される」フリーランス

 もちろん、安全が大切なのは間違いない。

 わざわざ、風が強い場所や氾濫しそうな川岸から中継する必要はまったくないのだから、安全なところから中継するのは当然のことだと思う。

 だが、わざわざ「ここは安全です」と断りを入れ続ける必要はないはずだ。日本の報道機関は「安全」重視が徹底される反動として、危険なところに(必要があっても)記者やカメラマンを送り込まないようになってしまった。

 欧米の多くの報道機関がロシアが侵略を続けるウクライナの前線に記者を送り込んでニュースを伝えているのに、日本の大手メディアはそういう危険なところに記者を送り込むことを躊躇している。

 ウクライナでも中東でも、危険な戦場に赴くのはフリーのジャーナリストやフォトグラファーであり、彼らが戦闘に巻き込まれたりすると「自己責任論」で非難されることになる。

 そういえば、1999年に治安の悪いナイジェリアでワールドユース選手権(現、U-20ワールドカップ)が開かれたときも、現地入りしたのはフリーランスがほとんどで、日本代表がベスト4入りしてから大手新聞社の記者が次々とやってきた。

 ちなみに「安全なところ」からの中継で、某公共放送局の記者やアナウンサーは、何度も何度もまったく同じ情報を繰り返し伝え続けた。繰り返しだったから、まったく面白くないし、あれでは伝わるものも伝わらない。

 もちろん、災害時の放送については放送法による規定から逸脱できないのは知っているが、それにしてもあまりにつまらないので幻滅してしまった。

 あんな報道を続けているから人々は既存のメディアか離れて、真偽不明のSNSの情報に引きつけられていってしまうのだ。

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