■試合の「3分の2」が正午キックオフ
サッカー選手が試合中に水を飲むようになったのは、私の記憶では、1986年のワールドカップ・メキシコ大会だったと思う。この大会は、全52試合中、実に67%にもあたる35試合が12時キックオフで行われた。「深夜」ではない。「正午」「真昼」である。
メキシコという国のサッカー習慣が、正午にキックオフすることになっているわけではない。暑さが厳しい国なので、大半の国内試合は太陽が沈んでから行われる。しかし、欧州と8時間の時差があり、欧州の「ゴールデンタイム」にテレビ中継するために、多くの試合が12時(欧州では20時)キックオフとなったのである。
ちなみに、メキシコでのワールドカップは1970年大会に続いて2回目だった。わずか16年後に2回目の大会を開催できたのは、本来この1986年大会の開催が予定されていたコロンビアが経済の悪化で開催を返上し、大会の3年前になって代替開催国を探さなければならなくなった国際サッカー連盟(FIFA)が、1970年の大会施設が残るメキシコを選んだからだった。
だが、たった16年間で、ワールドカップはまったく違う大会になっていた。1970年は初めて全世界にカラー中継された大会で、やはり欧州での放映時間を考えて12時キックオフの試合もあったが、32試合中約3分の1にあたる10試合、特に注目が高い試合だけだった。残りの試合は、16時(欧州では深夜0時)キックオフだった。しかし16年後の1986年は、すでに「テレビのための大会」になっていた。欧州のテレビ局からの強い要望で、全試合の3分の2が12時キックオフで行われたのである。









