大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第167回「サッカーに飲水タイムは必要か」(1) 東京V新人FW「灼熱の川崎戦」での興味深い行動、W杯「テレビ中継」が生んだ試合中の水分補給の画像
ペットボトルの水で首の後ろを冷やす久保建英。現在は常識の試合中の飲水だが、「タブー」だった時代もあった。撮影/渡辺航滋(Sony α-1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、生命に不可欠なもの。

■観測史上「最高」を記録した熱戦

 6月29日(日)に東京の味の素スタジアムで行われたJ1の東京ヴェルディ×川崎フロンターレは、なかなかの「熱戦」だった。前半にCKを活かして東京Vが先制、後半、川崎が反撃に出るなか、東京Vも守勢一方になるのではなく、ボールを奪うと果敢に前進してパスをつなぎ、ゴールに迫って川崎をけん制する。

「熱戦」はプレーだけではなかった。公式記録によればキックオフ時の気温は29.3度、湿度は66%。時折かすかに風が吹いたが、とにかく蒸し暑い夜だった。東京では「梅雨空け宣言」前だったが、6月1か月間の平均気温は「観測史上最高」を記録したとのことで、完全に「真夏」の感覚である。そのせいか、後半24分過ぎには、小屋幸栄主審は「飲水タイム」を指示した。前半はとらなかったこのブレークを後半だけとったところに、暑さへの「危機感」が表れていた。

 試合がアディショナルタイムにかかった頃、川崎のスルーパスを阻止しようとした東京VのDF谷口栄斗の左手が競り合った川崎FW山田新の顔に入り、山田が倒れるというアクシデントがあった。川崎のベンチのすぐ前である。谷口にはイエローカードが出され、山田のケアにドクターが入る中、何人かの川崎の選手たちは、タッチラインまで水を持ってきたスタッフのところに走り寄り、保冷バッグの中から小さめのペットボトルを取り出して飲んだ。

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