■「100年に一度」の名勝負も

 ワールドカップの決勝戦では、過去22回の大会、21回の決勝戦(1950年大会は決勝リーグだったので除外)で、延長戦に入ったことが8回ある。天皇杯全日本選手権の104回の大会、95回の決勝戦(9大会中止)で、延長戦が20回と比較すると、ずいぶん比率が高い。なかでも過去30年間、1994年のアメリカ大会以来の8大会の決勝戦では5回もの延長戦があり、うち3回はPK戦で決着がついている。

 2022年にカタールで行われた大会の「ノックアウトステージ」16試合では、5試合が延長戦に入った。ラウンド16の日本×クロアチアを皮切りに、そのすべてが延長では決着がつかず、PK戦をおこなっている。

 そう考えると、UEFAは提案を退けたが、「延長はやめて、即座にPK戦」でもいいのではないかと思ってしまう。

 だが、決勝のアルゼンチン×フランスはエキサイティングな延長戦だった。ノーマルタイムの前半にアルゼンチンがリオネル・メッシのPKとアンヘル・ディマリアのゴールで2-0とリード。そのまま試合が終わるかと思われた後半35分、フランスがキリアン・エンバペのPKで1点を返し、わずか1分後にエンバペが同点ゴール。

 延長に入ると、その後半4分、アルゼンチンはメッシがこぼれ球を押し込んで先行すると、13分、残り2分というところでフランスが再びPKを得、エンバペが決めて3-3としたのだ。PK戦ではアルゼンチンのGKエミリアーノ・マルティネスが活躍、4-2でアルゼンチンに3回目の優勝をもたらした。

 延長戦は英語で「extra time」。この場合の「extra」は、「余分の」「臨時の」などの意味だが、「特別な」という意味で使われることもある。選手も大変だろうが、高校サッカーのように「いきなりPK戦」というのは、あまりに味気ない。

 1970年ワールドカップ準決勝のイタリア×西ドイツ(4-3、30分間の延長戦で5得点が記録された)のような「100年に一度」のドラマが生まれることもある。「特別な時間」を楽しみたいと思うのである。

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