■「違いを生み出す」元Jリーガー
東京23FCの小松監督の言葉の通り、それぞれの所属リーグによっても戦い方に色があるし、それぞれのチームも目指すサッカーの方向性に大きな違いがあって、それらがぶつかり合う「東京都トーナメント」にはリーグ戦にはない、異種格闘技戦のような面白さが詰まっているのだ。
ヨーロッパなどでは、3部、4部リーグのサッカーというと、ロングボールを蹴り合ったり、ただただ中盤でボールの奪い合いが続くようなフィジカル系のサッカーも多いが、日本では下位リーグのチームでもパスをきちんとつないだり、可変システムを使ったり、技術や戦術を駆使した試合をするチームが多い。
もちろん、選手のレベルが違うから、プレー強度やスピードではJリーグのチームにはとうてい敵わないのだが、同じカテゴリーのチーム同士での戦いなら、互いのやりたいサッカーがぶつかり合って、面白い試合が見られることもある。
今では、下位リーグでもテクニックのある選手は多いし、法政大学の相澤デイビッドのようなフィジカルの優れた選手もいる。また、Jリーグ経験者が在籍している場合もあり、元JリーガーはJFLや地域リーグでは違いを生み出す選手となる。
たとえば、社会人系代表決定戦で横河武蔵野と対戦した南葛SCは、62分に大前元紀を投入。88分に、その大前がシュート技術を発揮して決勝ゴールを決めると、90分には今野泰幸(42)が入って守備を固めて逃げ切っている。
そんなさまざまな背景を持った選手たちと、それぞれ特徴を持ったチームが絡む東京都サッカートーナメントは、僕にとっては春の楽しみの一つとなっているのである。