■現代サッカーでは「当たり前」のことを

 何より重要なのは、「ボールなしの動き」だった。試合は90分あっても、1人の選手がボールをプレーできるのは長くても2~3分間に過ぎない。当時のアヤックスの選手の多くは、ボールがないときには止まっていた。

「味方がボールを奪ったら、つまりこちらが攻撃する番になったときには、チーム全体が絶え間なく動き回らなければならない。その動きは、チームメートへパスを出す可能性を、できるだけ多くつくり出すものでなくてはならない」 

「パスを出す可能性は、スペースをつくり出すことによってのみ生まれる。そのスペースは、プレーヤーが、ボールの近くにいないときでも絶え間なく動くことによってのみ生まれる」

「動いているプレーヤー――正しいタイミングで動いていなければならないが――は、相手のプレーヤーにとってはマークしにくい。そこで、パスを受け取る可能性がつくり出されるわけである。そのプレーヤー自身がパスを受けなくても、他のプレーヤーがパスを受けやすくなる可能性をつくり出すことができる」

「“ボールなしで動け”というと、たいていのプレーヤーは、いつも同じような調子で走り回る。このような考えは、まったく間違っている。ボールなしの動きは、効果的に動いたときにのみ意味がある。これが核心である」

「いいかえれば、プレーヤーは、正しいタイミングで、正しい場所から、正しい方向へ、さらにつけ加えれば、正しいスピードで動かなければならない」(以上引用『サッカー・マガジン』1977年6月25日号)

 現代のサッカーを知る人なら、当たり前のことのように聞こえるかもしれない。しかし、当時のオランダ選手にはこうしたことが理解できず、ミケルスは「非常に多くの忍耐と、多くの適切なトレーニング」が必要だったと言う。

(4)へ続く
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