【J1川崎を取材して感じた「育てる力と心」とは(8)】「フロンターレのサポーター」が「唯一無二のこのクラブの誇り」のワケとは。エンブレムを超え、海を越えたチーム愛の物語の画像
ACLE準々決勝アルサッド戦で勝利後の川崎フロンターレのサポーター 撮影:中地拓也
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「前を向け!」
「ここからだ!」

 他のチームであればブーイングが起きてもおかしくない試合の後に、こうした言葉が投げかけられるのは川崎フロンターレというチームの特徴の一つだ。

 1試合の負けであれば他のチームでも似た光景となるだろう。しかし、このチームは未勝利が続いてもその姿勢を貫く。鬼木達前監督がその最終戦で「唯一無二のこのクラブの誇り」と言葉にしたように、サポーターの存在も、選手やチームを育てる大きな要素と言える。
 2024年はチームにとって苦しい時期も長かった。その中で記憶に残っているのが、同年5月15日のサガン鳥栖戦(駅前不動産スタジアム)である。黒星が先行する中でトンネルをようやく抜け出すかと思われたこのアウェイゲームで、チームは2-5で大敗。平日・水曜日開催の佐賀県でのこの試合に駆けつけたサポーターにとってはショックが大きかったことは容易に察せられるが、それでも試合後、大きな声で選手を鼓舞した。
 どんな時も心がくじけないようにと必死に出した声量はすさまじく、そして、サポーターの顔は強かった。その瞬間のサポーターの様子を初見の人が見れば、試合の重要な局面だと思うだろう。それを大敗後に出せるのが、フロンターレサポーターなのである。
 かつて、このクラブの黎明期についてあるレジェンドはこう言葉にした。
「弱いから応援してほしいのに、弱いから応援してもらえない」
 その言葉は、今は跡形もない。

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